F log
近年稀に見る心躍る書籍です。
とはいえ個人差はかなり激しく、F 嫁は「二度と見ない」と宣言しております。
「WILDER MANN」 欧州の獣人−仮装する原始の名残 シャルル・フレジェ著
タイトルだけではなんだかわかりませんが、副題にその本質の一端が現れています。
著者は欧州 19 カ国を取材、約 160 点の色鮮やかな写真が掲載されています。
写真だけでも興味深いのですが、仏語版、英語版を前にしてどうしようか迷っていたところ、
翻訳版が出たので一も二もなく飛びついた次第です。
欧州各国に昔から伝わる祭り、儀式等に出現する数々の獣人達を捉えたものです。
彼らは動物の毛皮や骨、地域の植物で飾られた衣装を身につけています。
それらは目を見張る多様性とともに、国や時代をまたいでいるにもかかわらず意外なほどの共通性も見られます。
まぁ結論から言うと、すごく不気味なんです。
F 嫁の嫌がる点もそこで、人類の原生的な恐怖を喚起するような気がします。
見ていてゾワゾワする感覚があるんです。
日本においてわかりやすい例を挙げれば、秋田県の「なまはげ」 が近いと思います。
(wikiより)
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なまはげは鬼ですが、欧州で言えば悪魔や精霊ということになります。
いずれにしても小さな子供が見たら大泣き必至ですね。
ROCOH GR
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表紙裏には各獣人のシルエットが配されています。
これ見るだけでヤバイですねw
ネットのレビューで 「円谷怪獣のシルエットみたい」 と評した方がいらっしゃいましたがまさにその通り。
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書籍後端にはそれぞれの獣人の解説が掲載されています。
これは日本語版でなければ楽しめません。
翻訳を待っていて本当に良かったと思います。
これからは気になったいくつかをご紹介します。
書籍を買って欲しいので少しだけですが。
ROCOH GR
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ペルヒト 〈オーストリア / ヴェルフェン〉
このように獣人の名前、国、地方が書かれています。
そして欧州の美しい風景を背景にして、獣人の全身像がハッキリと写されています。
これなんか怖いでしょう?
子供が見たらトラウマ必至ですね。
祭りの夜などはザルツブルク市内だけで数千匹のペルヒト(複数形ではペルヒテン)が出現することもあるといいます。
ムチを振るいベルの音を響かせて子供を怖がらせるそうです。
ペルヒトの腰部分に見えるカウベルは、他の多くの獣人にも共通する物です。
上記のシルエットでもたくさんの獣人がベルを持っていますね。
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チェルブル(牡鹿) 〈ルーマニア / コルラータ〉
一転してカラフル、でもその表情はやはり不気味であります。
なんとなく宮崎御大の世界を思い起こさせます。
コルラータという地方で行われる牡鹿の仮面劇に登場するそうです。
民族衣装を身にまとった若者たちと踊るといいます。
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シルバチカリ 〈ブルガリア / バニシテ〉
ルーマニアのシルバチカリは村人に繁栄をもたらすと信じられているそうです。
この風体で結婚式などにも登場するというのですから。
これなど日本のなまはげにとても似ていますね。
動物の角をつけた仮面の形は様々で、形を見ればどの村なのかがわかるそうです。
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シュナップフィーシェ 〈イタリア / テルメーノ〉
膝から下は普通の脚が覗いていて、中に人が入っているのは一目瞭然なのにこの不気味さは何でしょうね。
全長 3m にも達する巨体、下顎は可動式でロープを使って木製の歯をガチガチさせるそうです。
南チロル地方テルメーノはワインの村で、懺悔の火曜日というカーニバルに出現します。
行進の仕方も殺され方も独特でたいへん興味深いものです。
この仮装の起源は不明だそうで、中世の抒情詩や神話のドラゴンとの関係を著者は論じています。
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バブゲリ 〈ブルガリア / バンスコ〉
F がいちばんゾワゾワ来たのがコイツです。
右奥の奴は本の表紙にも登場しています。
ブルガリアのバンスコではグレゴリオ暦により 1 月 1 日に仮面行事を行います。
山羊の毛皮をまとい、先に向かって細くなるスラティという長いフードをかぶります。
儀式の最中、既婚の女性たちに身体をこすりつけて多産と幸運をもたらすということです。
いや〜この訳のわからなさぶりが何ともいえず不気味です。
これらの他にもとてもブログで紹介するのがはばかられるようなトンデモ仮装のオンパレードです。
わざわざこんなものをお金出して買う意味が分からない…という一般的なご意見ごもっともです。
でも好きな方はとことん好きでしょ?
拙ブログを訪ねて来られた中にも、ほんの少しだけページを繰ってみたい方いらっしゃるんじゃないですか?
異形の物から受ける心をざわつかせる不安、決して心地よい訳ではないのに目を逸らせない複雑な感情を呼び起こします。
ぜひ欧州において大昔から脈々と受け継がれてきた奇祭、奇抜な獣人の一端をその目でお確かめください。