F 嫁 log
浅川紫織のガムザッティ に続いて今回は F 嫁がお送りします。
2014 年 3 月 23 日(日)の公演を観た後、私達夫婦は困惑してしまいました。
素晴らしい舞台だったのですが、何か「だまし絵」を見たような気持ちになったのです。
いろいろと斬新な構成に変えてある、このプロダクション。
ミスリードされたのでは…と思う部分もありました。(後で、Fがそれについては触れると思います)
私達夫婦が愛してやまない 『ラ・バヤデール』
三角関係の愛情のもつれ…という物語でありますが、その物語に出てくる人物はとても強い三人。
関わらなければ、お互いに幸せに成功者として暮らせたはずの三人。
・ 巫女という神と契約した立場でありながら、愛欲に負けてしまう女
・ ソロル(戦士)というハンターとして物欲・所有欲の強すぎる男
・ すべてを持ちながら、すべてが父のいうままである女(自分ではコントロールできない女)
限りなく強いのに、強さゆえ脆い三人。
その三人の愛憎劇がお互いを引っ張り合い、三人の作り出す三角形がある地点で破綻する。
その物語を見ていると人間の愚かさに改めて呆れ、自分の中に潜む「業」や「欲」にため息をつく…
私達夫婦がリピートしてしまう『ラ・バヤデール』の魅力はそこにあるのです。
が、23日はその部分にまで気持が行かず、二人とも不完全燃焼。
(私達の感度がおかしいのかも)(それとも、根本的に見方が間違っていたのかも)
いろいろ考えこみましたが、とりあえずファーストキャストであるはずの 26 日(水) の公演を観てから…と思い直しました。
紫織さんのニキヤ…1幕…
公演前に、何となく想像していたのは、美しく透明で硬い水晶のようなニキヤ像でした。
でも、それが良い意味で裏切られました。
僧正に頭のベールを取られ、はっと息をのむくらい美しいニキヤ。
・・・とここまでは想像通り。
その後、挨拶をし「タラ タラ ララ〜」と音楽が始まり、ニキヤが三度腕をしならせるのですが・・・
(一階前方なのに双眼鏡でガン見の私)
や・やわらかい…
その後も上半身がしなるように柔らかい。
もちろん、ポーズ・アラベスクなど下半身にブレはなく盤石。
でも、腕や背中はとにかく柔らかい。
そのせいか、ニキヤは硬質ではなく、やわらかな慈愛にみちた空気を醸し出したのです。
僧正が迫るときも、一度目はやんわりと断る。
「私は神と契約してしまった立場なのですよ」
「駄目ですよ。お立場を考えて」
恥をかかせないようにお断り。
とてつもなく魅力的。美しく高貴・清潔で優しい。
熊川さんがTVのドキュメンタリーで紫織さん演じるニキヤを「いい女なのよ」と言った訳がわかりました。
確かに超いい女です。
触れられるのに絶対つかまえられない女。
優しく慈愛に満ちた巫女。
でもなぜか妖艶な匂いも醸し出す。
そして大きな大きな存在感。
この浅川ニキヤと逢引する遅沢ソロル。
メロメロ、骨抜き状態で愛を誓います。
とっても気持ちお察しします…あの魅力には抗えないでしょうと思うのですが…
遅沢さん、ちょっとだけ冷静に残酷なソロル像に作ったほうが良かったのかなと思うのです。
ニキヤを愛してしまった気持ちに偽りはないけれど、「ハンター欲」にそそのかされ、ニキヤを愛してしまったという部分も
残しておいたほうが、後々、物語的には良かったのではないか…と。
じつはこの後、ガムザッティと出会うシーン。
ラジャがガムザッティの頭のベールを外してソロルと見つめ合うわけですが、その時に彼が財産付きの美貌にノックアウト
される様子が今ひとつはっきりしなかったのです。
その前のニキヤに落ちた様子の方が印象深く、ガムザッティとはあくまで政略結婚なのかな…という印象が。
この部分は宮尾ソロルの方が 『ガムザッティに落ちた』 感じを表していました。
手をわなわなとゆっくり振り下ろすだけなんですが、彼がニキヤを捨てガムザッティを選んだ事がはっきりと見て取れたのです。
そしてこの日、井上とも美さんが演じたガムザッティ。
とても良かったのです。
最初、出てきた時から艶然と微笑む。それも幸せそうに高いところから微笑む。
ガムザッティは世間知らずなためワガママかもしれませんが、本来は愛されて育った幸せな人。
ニキヤとの対決シーンでは、最初はあの手この手でニキヤと交渉するときも、ちょっと上から目線でニコヤカに笑顔で。
でも、最後に果物ナイフを掴んで抵抗したニキヤに腹を立てて「殺してやりたい」と子供のように感情を爆発させる。
浅川ニキヤと存在感も負けていなかったのです。
踊りも端正で、とても素敵でした。
RICOH GR
紫織さんのニキヤ…二幕…
アヘンの吸い過ぎで昏睡状態(仮死状態?)のソロルの意識の映像の中のニキヤ…
紫織さんのニキヤは今度は透明に。水晶や水面を思わせる透明な踊り。
1幕とはまったく違う存在感。
遅沢さんとのチームワークは見事で、二人の醸しだす透明な空気感に見とれました。
そして 跳躍の後もポワント音がほとんどしない紫織さん。
疲れは最高潮に達しているでしょうに…
影の王国の群舞も本当に美しく、じっと見ているうちにあっという間に終わってしまった二幕でした。
紫織さんの作り出したニキヤには本当にノックアウトされました。
この日の三人のバランスも拮抗していて、見応えあるもの。
バヤデールを見た…という充実感に満たされた公演だったのです。
もしも紫織さんは自分の作り出したニキヤと対抗するなら、どんなガムザッティを演じるのだろう…
(それはありえない話なのですが)
帰り道にそんな疑問が浮かびだし、そのガムザッティを見てみたいと切に思ったのです。
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出待ちレポは F 担当です。
23日(日)終演後には恒例の出待ちを敢行しました。
オーチャードの楽屋口はバレエが上演されるホールの中でもっとも出待ちし難い場所です。
写真もNGですし…
この日並んだのは 20〜30 人。
F 嫁は公演プログラムのインタビュー写真にサインをいただきました。
F はわざわざ 2 冊購入してこの日まできっちり包装のまま保存していたダンスマガジン表紙です。
RICOH GR
ガムザッティ、ニキヤでマチソワ連投とかもの凄いスケジュールをこなしている最中の紫織ちゃんは少々お疲れ気味。
お前が出待ちしてるからだろう‥とのご批判ごもっともです。
ダンマガの表紙を見せた瞬間、ちょっとだけウケていたのが救いです。
水曜日また観に来ますから最終日頑張ってくださいね、とご挨拶しました。
頑張れ、頑張ればかりでお疲れの身体をいたわる言葉をかけてあげられなかったのは大反省です。
毎回あれも言おうこれも言おうと脳内リハしているのですが、本人を前にすると緊張してわけがわからなくなります。
表紙にサインいただいたダンスマガジンは、恒例の表紙だワッショイ!! 専用掲示ケースに収納され F の部屋に飾ってあります。
RICOH GR
パート 3 は K-Ballet 熊川版「ラ・バヤデール」のプロダクションについて F が妄想炸裂で語ります。ワハハハ。