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東京藝術大学バッハカンタータクラブ 2019年 定期演奏会

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F log




昨今、SNS の負の面が強調される出来事が多く見られます。
しかし今回このブログを書くに至った経緯は、SNS が有益であることのひとつの証左といえましょう。


いえそんなに仰々しいお話ではないんです。


F のツイッターアカウントは一般ピーポーとして望外の 1,800名を超えるフォローを頂いております。
とはいえその大半はコスプレ、装備勢としてのフォロワー様だと思います。

ブログそのものは日常の愚痴あり、旨いものあり、音楽(クラシック)あり、踊り(バレエ)ありの雑食系です。
まぁ近頃はローエンフォースメント(法執行機関)のコスプレがメインではありますが。

そんな名もなきアカウントを突然フォロー頂いたのが…



東京藝術大学バッハカンタータクラブ 様 (@bachkantataclub) です。
2 月 3 日の事でした。


元より F 嫁との出会いがバッハ「マタイ受難曲」の合唱団ということもあり、ふたり揃ってバッハは大好きなのです。
不明にも藝大バッハカンタータクラブの事は存じ上げず、フォロー頂いておっとり刀でアカウントを見に行った次第です。




そこで翌々週、ちょうど2週間後の2月17日日曜日、藝大バッハカンタータクラブの定期演奏会があるのを知ったのです。
そしてそのプログラムの中に…カンタータ中いちばん好きといっても過言でない第 21 番(BWV21)を発見したのでした。

思わず「21番聴きてぇなぁ」とつぶやいたところ、すかさず藝大の中の人から「是非お待ちしています」とのリプライが…

そうなったらバッハ好き、21番好きとしては道はひとつです。
すかさずフォローバックをして返す刀でeプラスに飛び、全自由席2,000円也のチケットを1枚確保したのでした。



3 日後、F 嫁も行きたいと言い出し、追加でもう一枚チケットを購入しました。
17 日日曜日は仕事だったはずなのに何とか都合をつけたようです。













そんなこんなで藝大カンタータクラブの中の人と TL 上でやりとりしつつ定期演奏会当日を迎えたのでした。
17 日日曜日はゆっくり朝食を食べて、12時には JR 上野駅に降り立ちました。

会場は 13 時半ですが、全席自由席なので行列必至とみて 1 時間前の 12 時半には到着しようと目論んだのです。
バレエでお馴染み東京文化会館の前を通り、国立西洋美術館、科学博物館、国立博物館と文化的エリアを通り過ぎた先に…





RICOH GR


今回の会場奏楽堂がありま…というかこれは「旧」ですね。







RICOH GR


旧東京音楽学校の奏楽堂は、なかなか雰囲気のある建物です。
中を見たかったのですが、今回は先を急ぎます。







RICOH GR


これが東京藝術大学の正門ですが、奥に見える和風な警備員詰め所がまた渋いんです。
詰めてる警備員さん自体も渋かったですねぇ(笑






RICOH GR


警備員さんに声をかけて関係者以外立入禁止と掲示されている大学構内に入りました。
真正面奥のアーチ状の建築物が、東京藝術大学構内にある奏楽堂です。






RICOH GR


開場 1 時間前に奏楽堂前まで来ましたが流石に誰もいません。
一旦正門を出て通り沿いにあるコーヒーショップで時間を潰し、13時頃に再び奏楽堂へとやって来ました。

その頃には待っている方がちらほらと見られ、しばらくすると行列が出来始めました。
我々は7~8番目辺りに並びました。(トップ写真は奏楽堂前の大樹です)



奏楽堂は機能的かつ綺麗なシューボックス型のホールで、正面2階部分にパイプオルガンが設置されています。
座席の感じも固目で良いですし初めて訪れたホールですがすっかり気に入りました。





この日のプログラムはフライヤーにある通りですが演奏順は異なりました。




ヨハン・クリスティアン・バッハ 交響曲ニ長調 作品18-4

ヨハン・セバスティアン・バッハ カンタータ第105番《主よ、あなたのしもべを裁きにかけないでください》


休憩20分


ヨハン・セバスティアン・バッハ カンタータ第21番《も私の心は憂慮に満たされていた》


指揮 : 山根 風仁
管弦楽・合唱:東京藝術大学バッハカンタータクラブ





まず演奏会全体の序曲としてヨハン「クリスティアン」バッハの交響曲です。
セバスチャンの息子であるクリスティアンの作品はあまり馴染みがありませんでした。

10分強の短い三楽章ですが、小気味良い演奏が心地よく響いてきました。
速めのテンポでグイグイ引っ張る山根さんの指揮はカッコよいです。

この日初めて聽いたJ.C.の交響曲は魅力的で他の作品にも興味が湧いてきました。

ただの音楽ファンで理論的な事は分かりませんが、学生さんが自ら書いたプログラムの解説は詳細を極めます。
もっと音楽が分かっていたら面白いんだろうなぁと思わせます。

プログラムといえば巻末に数人のクラブ員が「カンタータクラブに寄せる思い」として寄稿されています。
それぞれが個性に富んだ文章でどれも読み応えがありました。





続いてオケの配置が変更され、同時に合唱団が入場してきます。
オケもバロック期らしく小編成ですが合唱団も30名ほど、若干女声が多いかなと感じましたが小ぢんまりとしています。

アマチュア合唱団の末席にあった我々夫婦ですが、人数が少なくなればなるほど1人の責任が増すのを痛感しております。





カンタータ第105番は陰鬱な前奏で開始されます。
直後の「ため息」「疑問、問いかけ」直後「嘆き」の下がっていく反復進行の部分が大好きなんです。

と、その箇所についてもっともらしいことを書いていますがプログラムの楽曲解説の丸写しです(笑)

合唱団は澄んでいて抑制の効いた素晴らしい声でしたね。
フーガの部分では若干女声が大きく感じました。もちろん男声も頑張ってましたが。

アルトのレチタティーヴォを経てソプラノのアリアです。
歌唱的にも難しそうなアリアですが、合唱のリーダーであるというソプラノのソリストは堂々と歌い切りました。

バスのレチタティーヴォを経て今度はテノールのアリアです。
こちらはカンタータクラブの部長さんがソリストで、これまた素晴らしい歌唱でした。

終曲のコラールは、特徴的な終わり方をします。
なんとなく心もとない感じが意図されたものですが素人としてはコラールはスッキリ納得で終わりたいですね(笑)

この第105番を聴くと通奏低音ってパッハ演奏でいかに大切かよく分かりますね。



しかし特別出演の方を除いてみんな学生さんなんですよねぇ。
本当に素晴らしい期待以上の演奏でした。

これは休憩後の第21番。そう大大大好きな21番に期待が高まりまくりです。










休憩後に再開された演奏会。
最後の一曲はこの演奏会を訪れる強烈な動機となったカンタータ第21番です。

初期の作品でありながら第一部、第二部に別れトータルで40分近くにもなるカンタータとしては大規模な曲です。
この21番がこれまた聴きどころのオンパレード、まさに名曲揃いなのです。


まず冒頭のシンフォニア。
個人的にオーケストラ奏者に生まれ変われるとしたらその筆頭にオーボエを挙げるオーボエ好きですが、
この21番は全体に渡ってオーボエが活躍しまくるのです。

オケ右側最前列にオーボエ奏者が控え、第一ヴァイオリンと濃密に絡みます。
この部分、チェロとオルガンの通低コンビが奏でる重々しい足取りと見事な調和を聴かせます。

う~んここだけでも21番好き(笑)



そしてこれまた大好物の冒頭合唱は「Ich, Ich, Ich」(私、私、私)と三回繰り返す特徴的な導入で心を鷲掴みです。
「憂い」をこれほど美しく表現する方法があるでしょうか。

バッハカンタータクラブの合唱は本当に素晴らしかったですね。
少しだけ涙ぐんだくらい。

全休止直後から猛烈に加速する合唱はバッハお得意の激しい上下運動です。
ここでもオケの疾走と合唱の歯切れ良い歌唱は見事にマッチしておりました。

冒頭合唱だけ繰り返して聽いてしまう F ですがバハカンの演奏は大変お気に入りとなりました。



続いて21番アリアで一番研ぎ澄まされたソプラノとオーボエのアリアです。
たった1人のオーボエ奏者がなんという存在感でしょう。

105番でもアリアを歌ったソプラノのソリストとともに見事なコンビネーションでした。
あ~やっぱりオーボエ奏者になりたい(笑)



短いけれど劇的なレチタティーヴォと次のアリアは別のテノールソリストが歌いました。
このテノールアリアの伴奏はテンポの緩急もあり本当に印象的ですね。


第一部最後の合唱はソロの四重奏から合唱に移行しますが途中のアダージョはすごく綺麗でした。
再びテンポアップしたフーガではやはりオーボエがカッコいいですね。

合唱は強弱もテンボも見事にコントロールされており、もはや学生の課外活動という事を忘れています。





第二部冒頭はこれまた大好きなソプラノとバスの二重唱です。
魂(ソプラノ)とイエス(バス)の対話としてのレチタティーヴォ~二重唱です。

この楽章のソリストは二人とも本当に素晴らしくイエスのバスは声の深みと厚みが心象的でした。
そして魂のソプラノはたいへん美しく歌劇を専攻する素養が上手く楽曲にマッチしていたといえるでしょう。


続いての合唱はソプラノ、アルト、バスのソロが歌う冒頭から後半の合唱までこれもドラマチックです。
トロンボーンも加わりオケにも厚みが出ています。

これもプログラムの解説で知ったのですが、この合唱曲は作曲当初は終曲となっていたそうです。
それもまったく違和感ないほど充実した楽章でした。


通奏低音とテノールのみで構成される10曲目のアリアは、4曲目のレチタティーヴォを歌ったソリストでした。
こちらのテノールもよく通る素晴らしい声でした。


トランペットとティンパニが加わる最終曲の合唱は今までの陰鬱な雰囲気を吹き飛ばす壮大なイメージです。
オケも合唱も絶好調で、素晴らしいアンサンブルを聴かせてもらいました。

この曲は文句なくカッコいいし、バハカンの演奏、指揮者の指揮も一体化して本当に素晴らしかった。

後半のフーガは「賛美、栄誉、栄光、力がわたしたちの神にありますように いつまでも永遠に」と歌う訳ですが、
キリスト教徒ではない仏教徒の日本人を感動させる力に満ちています。

力強いティンパニと輝かしいトランペットの後押しでカンタータ第21番は感動のエンディングを迎えました。



前2曲でも思ったのですが、流石にここまで聴きに来るお客さんは分かっていて指揮者が止めた腕をゆっくりと下ろすまで拍手は起きませんでした。
その溜めた分、最大限に大きな拍手が奏楽堂に響き渡りました。

いや~本当に素晴らしい演奏会でした。
この日、ここに居られてよかったです。





終演後、ロビーの大きなガラス窓が90度回転し、聴衆を一気に外に出せるのはとても機能的だと思いました。
そのロビーでは演奏者である学生さんが三々五々現れて、聴きに来てくれた観客と交流していました。

我々も縁故はゼロですが、果敢に指揮者の方や気になったソリストの方に話しかけてみました。
あとツイッターの「中の人」に御礼を述べようと思ってたのですが果たせず残念でした。



冒頭でも書きましたが今回この素晴らしい演奏会にたどり着いたのはツイッターでのやり取りでした。
東京藝術大学バッハカンタータクラブの裏方であるスタッフの皆さんにも感謝します。

もちろんステージ上の出演者の皆さんは素晴らしかったです。
同クラブは来年2020年に創部50周年を迎えるそうで、また飛躍の年となることでしょう。




RICOH GR



感動的な演奏に大満足の F 嫁です。
無理して仕事を調整したかいがありました。

また終演後、奏楽堂の前でこれまたツイッターでお世話になっている T さんにご挨拶する事が出来たのもこの日の喜びでした。
T さんは音楽好きでありまたバレエ好きでもあり、ディアナ・ヴィシニョーワのファンであるという我が家との共通点があります。




東京藝術大学バッハカンタータクラブは若い情熱にあふれており、その演奏は年配者にとってある種の栄養剤でもあります。
音楽好き、バッハ好きの皆様には是非とも機会を見つけて奏楽堂に足を運ばれることをお勧めします。











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