Quantcast
Channel: F & F嫁の “FFree World”
Viewing all articles
Browse latest Browse all 386

ミルタといえば

$
0
0

F log





2013 年夏の参議院議員選挙の日程が確定しましたが、少し前に投開票された別の総選挙で次のようなコトバを教わりました。


 ◯ 推しメン … 「イチ推しメンバー」の略。アイドルグループ等の中で好きなメンバーや応援しているメンバーの事。
 ◯ 箱推し  … ユニット全体、グループ全体を応援する事。
 ◯ 推し変  … 上記推しメン(アイドルグループの好きなメンバー)が変わる事。


言うまでもなく K-Ballet におけるウチの 推しメン は、プリンシパルソリストの 浅川紫織ちゃん です。
F だけでなく F 嫁も紫織ちゃんの大ファンですから、チケット代やらスケジュールで揉めることがないのは幸いです。

紫織ちゃんが所属しているカンパニーである K-Ballet を 箱推し しているかと問われるとちょっと微妙なイエスなんです。
ウチの推しメンはあくまで浅川紫織個人であり、K-Ballet のコンセプトには賛同するもののバレエ団全体としては条件付きの応援となっています。

というのは以前にも書いたように F も F 嫁もダンサーとしての熊川さんに食指が動かないというのが大きな原因です。
ご承知のとおり K-Ballet は熊川哲也というダンサーの強い欲望 (良い意味での) から生まれたカンパニーです。
渇望といってもよいかもしれません。
自らの名前を冠し自らが最多主演をこなしてプロフェッショナルなバレエ団を 10 年以上に渡って牽引してきました。
プロのダンサーを束ねるカリスマ性、営利組織の代表としての統率力、教育に力を入れる姿勢などは尊敬してます。
ですのでウチが K-Ballet を完全に箱推しするのは、熊川さんがカンパニー代表に専念する時なのかもしれません。




さて 2013 年の春ツアーで上演された 「ジゼル」 において、紫織ちゃんが主役のジゼルを踊るのはたったの一日。
その宝石より貴重な日に急な仕事で行けなくなってしまった傷心の F です。
その日 は F 嫁がバレエ好きのお友達と観に行ってくれたのでチケットが無駄にならずに済みました。
F の落胆ぶりを気の毒がった F 嫁は 「御大の日 (=チケットが高い日) だけど紫織ちゃんのミルタを観に行く?」 と嬉しいことを言ってくれたのでした。





RICOH GR


会場は渋谷オーチャードホールです。
休みだった F 嫁は自宅から直行し、仕事を終えた F は電車で駆けつけます。
雨は降っていなかったものの曇り空の渋谷です。
小腹が空いたので立ち食いで蕎麦を手繰ってからオーチャードへ急ぎます。




紫織ちゃんが踊ったミルタ を初めて観たのは 2009 年の事でした。
読み返すとお恥ずかしい限りの文章ですが、当時はこのように感じていたというのも事実。
やはり紫織ちゃんのミルタには御大のアルブレヒトがついてくるんだねぇw 






RICOH GR


ホール入口で F 嫁と合流してさっそく入場です。



ここ最近バレエの公演レポがそうであるように、時系列に沿っては書きません。
あらすじや公演全体の印象に関しては、他に素晴らしいブログや SNS でのレポートがありますのでご参照ください。

ウチはあくまで推しメン浅川ミルタについて超個人的な言及をします。










RICOH GR


ギリギリで取れた席は一階下手最後列でした。
バルコニー席を含む二階席がちょっと圧迫感があります。
オケの音も少々こもり気味です。

ジゼルの場合、ほとんどお墓は舞台下手ですね。
なので本来は逆側の席がいいのでしょうけど、ウチはあくまでミルタ目当て。
ミルタの定位置は舞台上手なのでこれで良いのです。

とはいえ舞台は遥か彼方ですから双眼鏡やオペラグラスは必須となります。
ウチには 2 個の双眼鏡があり、それぞれ 8 倍、10 倍ですが、この席だと 10 倍が適当でしょうね。
ダンサーが手を伸ばしても全身を視界に収めることができます。

さすが御大出演の土曜公演で客席はギッチリ満席です。









休憩が終わると第 2 幕です。
序奏が終わって緞帳が昇るとそこは青の世界でした。

過去の第 2 幕と比べると記憶は曖昧ですがいろいろ変わっているように思います。
墓地の入り口らしき鉄柵が舞台奥に立てられており、ヒラリオンもアルブレヒトもそこをくぐって墓参にやって来ます。

イメージとして墓地はもっと森の奥で、人工物はお墓だけだと思い込んでいましたから最初は少し違和感がありました。
いや柵の外には人が行き交う道があるような印象を持ってしまったのがいけないんですけどね。




ヒラリオンが霊の気配にビビッて逃げ出した後、いよいよ浅川ミルタの登場です。
静々とパドブレで登場した紫織ちゃん。
いや〜ちゃんと踊るのを観るのは久しぶりです。
F 嫁は先日の素晴らしいジゼルを観ていますが、F は思わず感涙です。

浅川ミルタのメイクはチークにがっつりシャドーを入れたかなり濃いもの。
視線が常に斜め上なのでシャドーがより強調されます。
身体は充分に絞れており、だだ舞台中央に移動しただけなのにものすごい存在感です。




そして最初のアラベスク〜パンシェを見て F は確信しました。
浅川紫織は素晴らしい表現者になりつつあると。




最初のアラベスク。
両手を水平位置で保ち、たっぷりと時間を取ります。
そしてゆっくりとパンシェ。

これは実際に観ていただきたいのですが、このアラベスク〜パンシェ一発で舞台を‥いや劇場全体を支配したのです。
贔屓目に見過ぎというなかれ、これは本当のことです。

アラベスクやアチチュードそれぞれもカッチリ決まってますが、ポーズに入る動作、解く動作がまた美しいのです。
要するに“行間”を魅せることが出来るのです。
たいへん申し訳ないけれど、この日のジゼルにこれはありませんでした。
アラベスクできちんと静止する能力はある、しかしそこに行くとき戻るときが急き過ぎなんです。

浅川ミルタは音をたっぷり使い (←これウチがダンサーを褒める常套句) 青の世界に君臨します。
オケに合わせて踊っているというより、踊りでオケも客席からの視線もコントロールしているかの錯覚に陥るほどです。

2 本の百合を持ってからも微動だにしない安定感です。
百合が腕の延長となり美しい軌道を描きます。
そして百合を下手と上手にそれぞれ投げてウィリ達を召喚します。



この後、1 分ほどの短いミルタのヴァリエーションがあるんですが、この曲大好きなんですよ。
個人的にはバレエ・ジゼルを象徴する一曲です。
ハープの序奏に木管が奏でる主題。
それに乗って軽やかに舞うミルタ。
う〜む美し過ぎます。



Myrtha variation - Ekaterina Kondaurova


まさか K-Ballet の映像があるわけもなく、マリインスキーのコンダウーロワです。
コンダウーロワも好きなダンサーの一人なんです。
件の短いヴァリエーションは動画の 02:04 〜 ですね。
長身のコンダウーロワも迫力があります。




浅川ミルタは軽やかなカブリオール〜ジュッテの浮遊感がたまりませんな。
怪我の影響を (少なくとも素人には) まったく感じさせず見事に舞台いっぱいを使って踊ります。
パドブレしながら優雅なアームスの美しさ、最後のジュッテ三連発の迫力も素晴らしかったです。

思わず 「ブラヴォー」をかけそうになりましたが、舞台の雰囲気を壊すので自粛しました。
カテコに取っておきますねw




まったくの余談ですが、上記リンク 2009 年の記事で紫織ちゃんのメイクについて触れました。
そして 2011 年 「白鳥の湖」 においても同様の問題を指摘し、日本の化粧品業界に奮起を促しましたw
そのかいあって(?)か今回紫織ちゃんのメイクは微動だにしませんでした。
さすがにミルタの運動量ですから、デコルテと背中にはたっぷりと汗をかいていました。
しかし後方の席から双眼鏡で見る限り、お顔のメイクはピタッと決まっておりましたよ。
ブラボー!ウォータープルーフ!




RICOH GR





その後はドゥ・ウィリとウィリ達、それにミルタが交互に踊っていきます。
ドゥ・ウィリのふたつのヴァリエーションもいいんですが、ミルタが踊る曲はどれも魅力的です。
もちろん贔屓の浅川ミルタだからということもあるんでしょうけれど。

ウィリ達が交差する見せ場の後、彼女たちを切り裂くようにミルタが上手からジュッテで飛んできます。
イイ感じに力が抜けていて、かつ高さのある素晴らしい跳躍でした。

終盤はミルタがセンターとなってウィリ達を従えた群舞。
ここはある種のカタルシスがありますね。
最後は全員ポワントでアン・オー。
ピタリと決まって満員のお客さんから拍手喝采でした。




ジゼルの入会式wが終了しヒラリオンが葬られた後、いよいよアルブレヒトが捕まります。
ジゼルがアルブレヒトを庇う場面、ミルタが振りかざしたローズマリーの枝が折れるという演出がありますよね。
K-Ballet 全体の演出かどうか不明ですが、浅川ミルタはローズマリーの枝を持ったまま仰け反ってたじろぐのです。
重なったジゼルとアルブレヒトから何かエネルギーのようなものが放出され、それに気圧されたというような印象です。
ここは冷徹なミルタが一瞬でもうろたえる面白いシーンでした。

時間切れでウィリ達が墓に戻っていく場面。
残ったミルタはゆっくりと後ろ向きでパドブレしつつ、墓の間を抜け大木の向こう側に消えて行きます。
もう一息でアルブレヒトを殺れたのに‥と無念と殺気を発したまま去るミルタもいます。
プログラムのインタビューにもあるように、浅川ミルタはある種の諦観に達したように無色透明となってふたりの横を通り過ぎます。
これは新しいミルタ像ですね。

ミルタは氷のままでいてほしいと思われる方もいると思います。
でも古典の登場人物に新たな生命を芽吹かせる事はなかなか出来るものじゃありません。
今後もこの表現を大事にして欲しく思います。

カーテンコールでは失礼ながら紫織ちゃんのときだけ 「ブラヴォー」 を 2 回。








K-Ballet における別のミルタも観た F 嫁は断言します。
「 紫織ちゃんのミルタはピカ一 」 だと。

F は思います。
日本人バレエダンサーにおけるミルタといえば、元東京バレエ団の井脇幸江さんの当たり役として有名でした。
浅川ミルタは井脇さんを超えると。
今後は団を超えてミルタといえば浅川‥と認知されるくらいになって欲しいと思います。

6 月 30 日 (日) はジゼルの千秋楽です。
最後の日も浅川ミルタは冷徹な表情の中にほんの少しだけ慈愛の心をのぞかせつつ暗い森を舞ったことでしょう。




RICOH GR



16 時半開演という早い進行だったので久しぶりに出待ちを思い立ちました。
ざっと 20 人ほどが並んでいました。

紫織ちゃんは出演者の最後として出待ちの列にやって来ました。
プログラムのミルタの写真にサインをいただき、少しだけお話しました。
F 嫁はジゼルの演技が素晴らしかったと興奮気味に話しております。
F は本日のミルタにいかに感動したかを拙い言葉でお伝えしました。

それにしても紫織ちゃん、ますます別嬪になるなぁ。
昔は受け答えもどこか自信無さげだったのですが、今では凛としたアーティストのオーラをまとっています。
最後にふたりとも握手をしていただき、10 月のオデット/オディールを観に行きますと宣言して別れました。
お疲れのところありがとうございました。




ウチにとって 推し変 はあり得ません。
今後とも K-Ballet の浅川紫織ちゃんを応援します。















Viewing all articles
Browse latest Browse all 386

Trending Articles