F log
8 月 18 日の日曜日。
F 嫁と
高円宮殿下記念 ローザンヌ・ガラ 2013 を観に行ってきました。
いまや脂が乗り切っているヴィシニョーワ・ガラと日程がまるかぶりなローザンヌ・ガラですが、こちらを選択したのはもちろん F & F 嫁が大ファンの
英国ロイヤル・バレエ 崔 由姫 (チェ・ユフィ) ちゃん が出演するからです。
ユフィちゃんは
3 年前のローザンヌ・ガラ でロイヤル・バレエ同僚の平野さんと「タイースの瞑想曲」をしっとりと踊りました。
その際、幸運にも終演後にいただいたポワントは
家宝として 今も我が家に展示されております。
RICOH GR
お盆が明けても衰える気配のない猛暑の中、渋谷区神宮前の 青山劇場 にたどり着きました。
渋谷からも表参道からもほとんど等距離ですから歩くしかありません。
軽く食事をしていたら時間になってしまい、あわてて駆け込みました。
RICOH GR
壁面の時計をご覧ください。
15 時開演の 5 分前に到着です。ふぅ〜
劇場内はほぼ満席の盛況ぶりでした。
これから感想をつらつらと書き綴るわけですが、いつもの通り たいへん偏った鑑賞記 になることをご了承ください。
関心のある演目とそうでないものに対しては、呆れるほど文書量が違うと思いますが個人のブログなので思った通りに書きます。
PART 1
「春の声」 河野舞衣 ルカス・スラヴィツキー
ミュンヘン・バレエのソリストである河野さんとプリンシパルのスラヴィツキーさんのペアによるガラのオープニングにふさわしい華やかな作品。
河野さんは可愛らしい表情で頑張りましたが、大きな破綻は見せずとも少々余裕が無かったように感じました。
意外と激しいアシュトンの振付けを、正確かつ余白でゆとりを見せながら舞うのは本当に難しいと思いました。
あらためて
コジョカル/コボー組の映像 はものすごいと思い知りました。
後半、女性が男性の肩の上に横向きにリフトされグルングルン回る場面がありますが、その際にスラヴィツキーさんが上手に移動したのはどうしてでしょうね。
回りながら移動したのでは回転の勢いが無くなるし、何かのトラブルかと思ってヒヤッとしました。
あそこだけは再考して欲しいです。
とはいえ紙吹雪が舞う爽快な作品を踊る若い二人によってホールに良い空気が醸成されました。
「ラ・バヤデール」よりヴァリエーション 山本雅也
今年のローザンヌでスカラシップを獲った山本君によるコンクールと同演目です。
彼はいいですね。
上背こそまだ成長途中であるものの跳躍の高さ、美しいつま先、そして回転には力強さがありました。
そしてプロのダンサーとして必要な「華」を持ちつつあると思います。
コンクール当時よりさらに良くなっているように思います。
今月よりロイヤル・バレエの研修生としてキャリアをスタートさせたとのこと。
ロンドンで頑張ってもらいたいです。
「バキータ」よりヴァリエーション みこ・フォガティ
イントロダクションともいうべき
6 月 4 日のエントリー で触れたのはみこちゃんについてでした。
さすがにスマホの壁紙は変わったもののw、成長株として彼女に注目し続けています。
以前にも書きましたが、彼女のパはすべてにおいて計算され尽くしています。
この角度で手を振り上げここでスパッと止めたら見栄えがする。
ここで首の角度を変え、視線で見得を切る。
いえ悪い意味で言っているのではありません。
プロフェッショナルとはそういうものだし、それを可能にする力があるのですから。
素人目にもわかるゴージャスな衣装と、踊る事に対して幼少期からの贅沢と言ってよい環境。
これらで創りあげられたみこ・フォガティという作品は素晴らしい完成度を誇っています。
完成度が高いだけに今後彼女がプロフェッショナルとしてのキャリアをどのようにスタートさせる考えなのか気になります。
そしてもっとも知りたいのは、どうして演目が「エスメラルダ」から「パキータ」に変更になったかです。
だれが決断したのか、その理由は何故なのか。
この答えがみこちゃんの現在そして未来に重要な意味を持つような気がしてなりません。
「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ 平田桃子 ジョセフ・ケイリー
バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルペアである平田/ケイリー組です。
コレーラのバルセロナ・バレエを経て BRB に再び復帰した平田さんは小柄ですが力強いダンサーでした。
ケイリーさんはお約束の上半身裸で、少々ぽっちゃりして見えましたが踊りはシャープでよかったです。
そしてお二人の踊りの安定感とオーラ、そして作り出されていく空気感。
見ているうちに、あっという間に別世界に連れて行ってくれました。
若人の後の演目だっただけに、特に「プリンシパルの踊り」を感じました。
何も考えずに見ていて楽しかったです。
「ジゼル」第2幕より パ・ド・ドゥ 加治屋百合子 ジャレッド・マシューズ
ABT のソリスト同士のペアで、第 2 幕をアレンジした構成になっていました。
加治屋さんは様々なドキュメンタリーフィルムでもお馴染みです。
マシューズさんはその加治屋さんとペアを組むことが多いですね。
加治屋さんはメッチャ細いですが、強靭な体躯を持っていると思いました。
ひとつひとつのパは正確だし、延々続くアントルシャはそのすべてが正確でした。
そしてふたりとも足音が静かだったのも印象的でした。
加治屋さんにジゼルはとても似合っていたと思います。
マシューズさんの包み込む暖かさも印象的でした。
PART 2
「Shaft」 小尻健太 島地保武
自分がコンテンポラリーが苦手で理解不能、不感症だと再々認識させられた演目です。
それぞれの運動能力が素晴らしいことを差しおいて、最初から最後まで男二人が悪ふざけしているようにしか見えませんでした。
ヴィヴァルディの「四季」が用いられていたようですが、あまりのつまらなさに覚えていません。
初めて見るコンテの恐怖は、この苦行があとどれくらい続くのかわからないということです。
本当にごめんなさい、本当にダメだわ。(F 嫁もまったく同意見です)
「アスフォデルの花畑」第 2 楽章より 崔 由姫 平野亮一
ローザンヌ・ガラに足を運ぶ動機となったユフィちゃん/平野さんのロイヤル・バレエにおけるファーストソリスト組です。
前演目がコンテだったことを差し引いても、F にとって この日のベストパフォーマンス でした。
新進気鋭の振付家、リアム・スカーレットの作品です。
ブラウンのワンピースをまといシルエットで立つユフィちゃんが美しすぎます。
照明も凝っていて最初はシルエット、徐々に上手からのサイドライトが舞台を照らします。
身体の左右で照度が異なり、素晴らしい陰影を見せてくれます。
リアム・スカーレットの作品はほんとうに美しいですね。
今日気鋭の振付家といえばコンテンポラリーに傾きそうですが、こんなにも動きの美しいクラシック作品を創ってくれたことに感謝したいと思います。
第 2 楽章より、とありますから緩徐楽章で、その他にプーランクの音楽に沿った第 1 や第 3 楽章も存在します。
ユフィちゃん自身がこの役を踊りたかったということで、本人もたいへん気合が入っていたし結果も充分に出ていると思いました。
ロンドンでは 「スティーブン (マックレー) と第 3 楽章を踊ったことがある」そうです。
かなりテンポが速いという第 3 楽章も観てみたいなぁ。
というかこの作品の全貌が知りたいですね。
そして特筆したいのはパートナーの平野亮一さんも素晴らしかったことです。
3 年前、「タイースの瞑想曲」をやはりユフィちゃんとペアを組んで踊りましたが、格段の飛躍と言わざるを得ません。
元々長身で手脚の長い恵まれた体躯ですが、頼り甲斐のある見事なパートナーシップを見せてくれました。
そしてこの言葉が正確かどうかわかりませんが、“色気”のようなものが感じられた気がしました。
古典グラン・パ・ド・ドゥのように派手な仕掛けがあるわけではありませんが、しみじみと良い作品を観たなと思えました。
この作品はユフィちゃんにたいへん合っていると思います。
新たに生まれた作品の近くにいるのは運でありますが、その役を踊ることができるのは運+実力です。
この「アスフォデルの花畑」全曲を含むトリプルビル等をコヴェント・ガーデンで観るのが夢になりました。
そんな機会に恵まれるといいなぁ。
決して長くない作品の間中、ユフィちゃんと平野さんの創る世界にうっとりと見惚れていました。
あらためて言います。
やはりユフィちゃんは私のミューズ (ギリシャ神話の女神 : 音楽、舞踏、学術、文芸などを司る) です。
「ドン・キホーテ」より グラン・パ・ド・ドゥ 川村真樹 厚地康雄
新国立劇場バレエ団の OG OB によるペア。
厚地さんは BRB に復帰されましたが、川村さんはプリンシパル退任後オノラブル・ダンサーというのになったそうです。
何?そのオノラブルって。
川村さんは昔の印象より締まった気がします。
ただこの日は体調が万全ではなかったのかもしれません。
後半ちょっと力尽きた面がありました。
まだまだ踊れるダンサーだと思いますので多様な道で活躍してほしいと思います。
厚地さんは長身で華のあるダンサーですね。
ただ個人的には見得の切り方に少々やり過ぎ感を覚えました。
外国のカンパニーではあれくらいのアピールが必要なのかもしれませんが。
「白鳥の湖」第 2 幕より グラン・アダージオ SHOKO ヴィスラウ・デュデック
ガラといえば‥のドン・キをひとつ前にして白鳥を PART 2 のラストに持ってきました。
それもオデットのグラン・アダージオを。
演目にまったく関係ない話でダンサー名ですが、デュデック祥子/Shoko Dudek じゃダメなんですかね。
どうにも SHOKO というのがピンときません。
やたらローマ字で名前を表記する J-POP のアーチストみたいで。
それはともかく前回 2010 年のローザンヌ・ガラではご懐妊中であり、その後無事男児をご出産された SHOKO さん。
身体を気遣って演目を替えましたが、今回は白鳥のグラン・アダージオです。
ローザンヌコンクールの日本人入賞者によるガラという括りであるならば、SHOKO さんの体躯は日本人女性としては飛び抜けています。
長身揃いのベルリン国立バレエではまったく問題ありませんが、やはり日本人ダンサーで集まると長身が目立ちます。
もちろんご主人であるデュデックさんは更に長身なので、ふたりで並び立てばまったく問題ないのですが。
SHOKO さんは盤石の踊りでしたね。
デュデックさんはヴァリエーションでの爆発力こそ足りなかったものの、よく SHOKO さんをサポートしていたと思います。
ただガラの区切りとしてはやはり黒鳥等、盛り上がる演目が観たかった気がします。
PART 3
「ラフマニノフ ピアノコンチェルト 第 3 番」 酒井はな 西田佑子 他 32 名のダンサー
「華がある」といえば酒井はなさん。
はなさんの強烈なオーラを感じることは出来たものの、作品としてはおもしろくありませんでした。
まずラフマニノフの 3 番というピアノ協奏曲にしては長大な作品を取り上げたことがひとつ。
始めて観た演目でしたが、まさか全曲フルとは思いませんでした。
30 名以上のダンサーが同種のレオタード着用でソロ、ペア、群舞と入れ替わり立ち替わり舞台に登場しますがどうにもせわしないです。
バレエ用に書かれたのではないクラシック音楽を使うのは、よほどテーマ性が無いと飽きます。
ところどころで酒井はなさんが出てくるとハッと意識が戻る‥の繰り返しでした。
巷間たいへん好評だったという演目ですが、個人的には受け入れられませんでした。
FINALE
フィナーレは各出演者が登場するだけではなく、それぞれの演目に沿ったちょっとしたパフォーマンスをしながらの入場になりました。
なかなか華やかで良いですね。
ユフィちゃんと平野さんはスッと登場してクルクルッと回転した後、サッとリフトを決めてシックにまとめました。
演目とリンクした短いけどニクいパフォーマンスでした。
2013 年のローザンヌ・ガラを楽しませていただきました。
個々の出演者は皆さん流石な方ばかりですので、その多彩な引き出しを充分に堪能できました。
ただコンテ部分とラフマニノフは除きます。
コンテは一表現としてありかとは思いますが、ラフマニノフの時間にそれぞれもう一演目観たいと思ってしまいました。
2010 年のイントロダクションとしての直近入賞者パフォーマンスは今考えるととても良い企画のような気がします。
青山劇場は 2015 年に閉館になってしまうとのことです。
次があるなら 2016 年、ローザンヌ・ガラはどこで開催されるのでしょう。
この企画はとても好きなので、ぜひとも場所を変えて継続してもらいたいと思います。
出待ち
さ、拙ブログ恒例の出待ちですw
青山劇場の楽屋口は会場を出て右手の建物沿いにあります。
終演後に駆けつけると、親子連れなど 10〜15 人程がダンサーが出てくるのを待っていました。
SHOKO さんと夫のデュデックさんが出てきて、人々が集まりました。
SHOKO さんはにこやかにサインや写真撮影に対応されてました。
デュデックさんがそれを優しく見つめていたのが微笑ましたかったです。
あるファンのリクエストで夫婦のツーショットを撮ってもらった時、SHOKO さんは一番の笑顔でした。
じつに仲良しのふたりです。
しばらく後、赤いノースリーブに身を包んだユフィちゃんが出てきました。
やはりファンに囲まれています。
しばらく待って彼女が階段下に降りてきた時に話すことができました。
「お久しぶりです〜」と覚えていてくれたのは嬉しかったです。
そしてユフィちゃんが F の顔をしげしげと眺めて一言、
「痩せました?」
ダンサーとツーショット写真を撮る度に寿命が半年づつ延びる F ですが、この「痩せました?」の 五文字だけで丸一年 は延びましたww
然るにユフィちゃんと面と向かって会ったのは
韓国国立バレエのソウル公演 以来。
ソウルの時は超デブだったんだよなぁ。
あれから 7〜8kg は減りました。
今も決してスマートではありませんが、憧れの女性に努力を評価してもらったような気がして嬉しかったですね。
そしてお約束のツーショット。
RICOH GR
ユフィちゃんは可愛い笑顔でした。
そして大人の素敵な女性になりましたね。
短い時間でしたが会話の端々に充実しているダンサー生活が窺えました。
この日のパフォーマンスに対しての感想も言葉が足りなかったですがお伝えしました。
時間があれば食事にでもお誘いしたかったのですが、翌日月曜日のフライトですぐロンドンに戻るとのこと。
火曜日からすぐに ROH での仕事が始まるそうです。
じつにハードだ。
他にも待っているファンがいらしたので、F 嫁が用意してくれたちょっとしたプレゼントを渡してお別れしました。
RICOH GR
これは同時にプログラム表紙にいただいたサインです。
表紙にとお願いすると、ユフィちゃんは迷いなく大胆に書いてくれました。
イラストによる女性ダンサーの脚の間に男性ダンサーの脚が見えます。
サインはその空間に見事な曲線で収まっています。
こんなところにも彼女のセンスの良さを感じることができます。
ローザンヌ・ガラのと言いつつ、いつも通りのミーハーレポとなってしまいました。
短い演目でしたが、夏の暑い最中にユフィちゃんの踊りが生で観られて本当に良かったです。
2013 年は
RB 来日公演での日本主役デビュー もあり、たいへん充実した年になりました。
ユフィちゃんをはじめ、ローザンヌ・ガラに出演されたすべてのダンサーのご活躍をお祈りします。