F log
K-Ballet「白鳥の湖」 公演を F 嫁と観に行ったのは 10 月 19 日の土曜日でした。
翌日の 20 日自宅の PC が不調に陥り、それ以来書けずにいました。
直ってきたのはなんと
サバイバルゲーム出陣 前日。
ついそちらのレポを先に書いてしまい、バレエのレビューは後回しとなってしまいました。
少なくとも F と同世代の皆様ならおわかりかと思いますが、昨今の記憶力減退には著しいものがあります。
直後のレポでも支離滅裂なのに、半月も前の公演についてはどうかと思いますが、素晴らしい舞台だったので
紫織ちゃんを中心に簡単にでも記録に残したいと思います。
さてウチで K-Ballet の公演といえば、そのプリンシパルソリスト 浅川紫織ちゃん です。
浅川紫織というバレエダンサーを知ったのは
2007 年の「ドン・キホーテ」でした。
もちろん主役ではありません (キトリの友人) でしたが、キラリと輝く何かが見えて以来夫婦揃って応援しております。
同じ年の 11 月には認められてオデット・デビュー。
当時 K はオデット/オディールが別の配役でした。
羽ばたけ紫織ちゃん 2007.11.20
そして翌 2008 年 5 月には両方同時に踊りオディール・デビュー。
K-Ballet 「白鳥の湖」 オディール・デビュー前編 2008.5.16
K-Ballet 「白鳥の湖」 オディール・デビュー後編 2008.5.17
約 1 ヶ月後に行われた同じツアーの 6 月の公演では驚くべき進化を見せてくれました。
開花 〜 K-Ballet 白鳥の湖 2008.6.20
3 年後の秋ツアーではより深みを増した紫織ちゃん。
K-Ballet 「 白鳥の湖 」 2011.10.2
元来バレエダンサーにとって白鳥の湖というのは特別な作品ですし、オデット/オディールという役もポピュラーでありながら、
これほどバレリーナにとってチャレンジングな役もありますまい。
ウチはすべてではないものの、紫織ちゃんのオデット/オディールはほとんど観ております。
今回の秋ツアーは目玉がグルジア国立の芸監兼ダンサーのニーナでしょう。
紫織ちゃんが踊る日はたったの一日しかありません。
これは K-Ballet にとって大いなる損失 (営業的な側面ではなく) と言わざるを得ません。
それほど今回の 「白鳥の湖」 には感銘を受けました。
RICOH GR
数日前に 「渋谷じゃなく上野じゃないか!」 と気づいたあわてんぼうの F ですw
最近オーチャードでの公演が多かったのでつい。
K-Ballet の 「白鳥の湖」 は第 1 幕、第 2 幕が連続して上演され休憩は間の 1 回のみです。
その前のプロローグでは紗幕の向こう側で人間のオデットがロットバルトに白鳥へと変えられてしまう瞬間が描写されます。
何度も言っていますがこの演出はわかりやすいですね。
エピローグも含めて主役の着替えはたいへんでしょうけれど。
幕が昇ればあいかわらずゴージャスなセットが光ります。
とはいえ先日、ボリショイの最新 「バヤデール」 の BD を見たのですが、連中舞台の上に宮殿を建てちゃってるじゃないですか!
まぁ舞台の大きさが段違いとはいえ、奥行きのある物理的な建造物 (後面はハリボテだとしても) を組んじゃうのはすごいですね。
まるで大地を埋め尽くして迫り来る T34 のような物量w
K-Ballet の舞台装置は、幕や装飾を巧く使ってゴージャスに見せています。
それはそれでたいへんな技術だと思うし、それがカンパニーの個性として認知されているのは素晴らしい事と思います。
紫織ちゃんのオデットはもう天下一品でした。
K-Ballet の演出ではオデットはパ・ド・ブレではなく歩みを持って登場します。
これは白鳥が舞い降りて着地する様を表現したものだと思います。
一瞬動きが止まり、そこから最初のポワントを踏み出す瞬間が素晴らしいのです。
ゆっくりゆっくり脚を上げて音楽をたっぷり使って (←また始まったw) トウが接地するのです。
いろんな意味でヲタクですから、ディテールに意味を見出すのは得意中の得意です。
この最初の一歩は紫織ちゃんの明確な円熟を示すものだと確信しました。
プログラムに掲載されたインタビューによれば、グラン・アダージョの解釈もいっそう深まっていると思いました。
あの一連の踊りの前半、後半でしっかりとオデットの心情を演じ分けておりましたよ。
グラン・アダージョがどちらかといえば不得手な F もググッと身を乗り出しましたよ(あくまで心情的に)。
グラン・アダージョが大好きな F 嫁も絶賛しておりました。
ちなみにお写真横の名前は、出待ちでいただいたサインです。
サラサラサラ〜と崩したサインではなく、今だにきちんと漢字でご自分の名前を書く姿勢に共感を覚えるものです。
まぁその分、一人あたりにかかる時間が長くてたいへんなのですが。
そして過去のレビューでも書いた、出逢えた二人がロットバルトによって引き離されるシーン。
ここでの紫織ちゃんはもう圧巻でしたね。
以前は人間から白鳥に変えられた途端、動きが人らしくなくなるのに感動してました。
今回はその前段、人間同士の二人が引き離されようとする刹那、紫織ちゃんの演技に感激しました。
ロットバルトの嵐のような魔力に為す術もなく、それでも抗いジークフリードを求めて必死に伸ばされた腕。
双眼鏡で覗いていたのですが、思わず力が入りました。
そして直後に静というべき背中を向けた白鳥の羽ばたき。
いや〜見事です。
ディテールにこだわり過ぎとのご批判もあろうかと思います。
でもそうした細かな積み重ねが深い役作りにつながるのだと紫織ちゃんは信じているだろうし、F もそう信じます。
RICOH GR
休憩の後、続けて上演される第 3 幕、第 4 幕です。
紫織ちゃんのオディールは定評のあるところです。
ところが上記のインタビューを読むと、じつはオディールの表現にこそ試行錯誤しているとのことでした。
ロットバルトとオディールの関係というのもその中のひとつでしょう。
プログラムのあらすじによれば、「ロットバルトは手下を引き連れて舞踏会にやって来た。その中にオデットそっくりのオディールもいた」とのことです。
オディールはロットバルトの娘という解釈も散見されますが、ここでは手下のひとりということなのでしょうか。
ロットバルトのマントを効果的に使ったオディール登場シーンはカッコイイですね。
グランフェッテに入る直前にもそれは繰り返され、否が応にも盛り上がります。
いずれにせよロットバルトの命を受け、ジークフリードを籠絡せねばならないのがオディールです。
紫織オディールはジークフリードの視線を背中で惹きつけつつ、ロットバルトの耳打ちを受けて一物ある笑みとともにうなずきます。
第 3 幕の山場であるグラン・パ・ド・ドゥは綺麗でした。
出だしアチチュードのアームスも最初に見た時は抵抗があったものの、現在ではすっかり見慣れて好きになりました。
それだけではなく手首を柔らかく反して動きをつけるなど、毎回進化を続ける紫織ちゃんです。
F 嫁は紫織ちゃんのオディールを観て、王子をたぶらかす悪というより無邪気な女の子と感じたといいます。
ご本人は表現や解釈に悩んでいても、紫織ちゃんの持つ “華” はオディールで完璧に開花します。
またプログラムなどで機会があればロットバルトとオディールの関係性についても、紫織ちゃんの考えを話してほしいものです。
ロットバルトの杉野慧さんは初めて観ましたがなかなかよいですね。
ソロなどは切れの良い踊りでしたが、立役となる舞踏会ではもう少しの存在感がほしいところです。
とはいえ個性的な悪役を踊れるダンサーは貴重です。
まだアーチストですから今後の活躍を期待しています。
第 4 幕ではふたたびオデットに戻ります。
ここからは K-Ballet ならでは、悲劇に向かって一直線の怒涛の展開です。
ジークフリードの遅沢さんは紫織ちゃんとは何度も組んで気心がしれているパートナーです。
ロットバルトに定評のある遅沢さんですが、ノーブルな王子もなかなかのものでした。
終幕では高揚したまま死に向かって突き進むわけですが、決してオーバーアクションではなく説得力ある演技でした。
バレエ音楽の頂点ともいうべきチャイコフスキーの音楽が最高潮に達すると、命を断つマイムとともにオデットが湖に身を投げます。
ジークフリードも迷わず後を追い、思いっきりダイブします。
ここはもう観客も静かな興奮の中に叩き込まれる名シーンですね。
二人の愛の絆にたじろいだロットバルトは、白鳥たちの群舞に追い詰められて破滅します。
エピローグではドライアイスと紗幕が降りてくる中、白鳥たちはどこへともなく群れで飛び続けます。
舞台の奥ではプロローグの時に来ていた黄色のドレスを着た人間のオデットが現れます。
ジークフリードと別の世界でふたたび逢い、天国へと続く階段を登るところで緞帳が降りてきます。
プロローグと対になる素晴らしい演出だと思います。
白鳥の湖は悲劇が好みなのですが、その中にも心の平安が訪れるところが良いじゃないですか。
客席からは盛大な拍手が送られました。
カーテンコールでは杉野さん、遅沢さんもですが、紫織ちゃんに対する拍手はすごかったですね。
自分が贔屓のダンサーがどんどんスターになっていくのは嬉しい/嬉しいの両面です(反面なし)。
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終演後、F & F 嫁に K-Ballet への道を拓いてくださった yol さん、ご友人のなじゃさんと一緒にロビーで話しました。
2008 年にこの東京文化会館で初めてお話させていただいた紫織ちゃんの母上も交えてバレエトークは尽きることを知りません。
とうとう文化会館の係の方に 「そろそろお時間ですので‥」 と退出を促されてしまいました。
その後は皆さんと別れて F 嫁とふたり、出待ちの列に並びました。
小雨が降ったり止んだりのあいにくの天気でしたが、ダンサーさんが現れるときには小康状態でした。
御大は出迎えのワゴン車にスッと乗って去って行きました。
一部からキャーと声が上がったので見たら、ファンの列を一瞥だにせずクルマに乗っちゃったんです。
手ぐらい振ってやってもバチは当たらないだろうと思っちゃうのは、御大ファンじゃないからでしょうかw
しばらくすると遅沢さんが出てきました。
F 嫁はプログラムにサインをいただき、ツーショットを所望したところ問題なく OK でした。
写真は絶対に NG ですとスタッフが厳戒態勢の時もあるんですが、この差は何でしょうね。
会場の違いかしら。
ま、いずれにしても写真 OK なら嬉しい事です。
我々の前に若いお嬢さんの 3 人組がいらっしゃいました。
耳に入ってきた会話から、彼女たちも紫織ちゃんのファンのようです。
あら嬉しいw
紫織ちゃんのがゆっくりゆっくりサインしつつ写真を撮られつつ近づいてきます。
前の彼女たちのところに来た時、3 人と紫織ちゃんの写真を頼まれてシャッターを押しました。
他の人のカメラは緊張するなぁ。
その後、いよいよ F & F 嫁の前に紫織ちゃんがやって来ました。
いつものように舞い上がって何を言ったのかよく覚えてませんw
それでも今日の舞台の感激の一端だけでも伝えられたと思っています。
そしてお約束のツーショット写真。
RICOH GR
顔認証 AF をどのように出し抜くのかわかりませんが、後ろの壁にピントを合わせるのが得意だった F 嫁ですが、
今回は上野駅をバックにした紫織ちゃんと膝を曲げた F のツーショットをバッチリ撮ってくれました。
いや〜紫織ちゃん綺麗だなぁ。
お疲れのところありがとうございました。
最後に握手をしてもらいつつ、春ツアーの 「バヤデール」 への期待を少々。
紫織ちゃんの踊るときは必ず観に行きますと約束してお別れしました。
バレリーナとしてのある意味頂点であるオデット/オディールは、紫織ちゃん自身の言う通り終わりのない追求の旅でしょうね。
この 8 月に行われた
K-BALLET YOUTH 第1回記念公演 「白鳥の湖」 において、紫織ちゃんはプリンシパル・コーチングとして
若いダンサーにオデット/オディールの指導を行いました。
バレエに限らず世の中どんな事でも“他人に教える”ということは自分自身の実になる行為です。
教える資格も取得して K-Ballet のスクールでも指導しているという紫織ちゃん。
これからもバレエダンサーとしてどんどん成長していくことでしょう。
今回の公演では怪我から復帰はしたものの、本当の意味での復活ではまだないと思われます。
すべてを解き放った全開の紫織ちゃんを観たい。
今後も F & F 嫁は紫織ちゃんを応援し続けたいと思います。
あ〜それにしても 「バヤデール」 楽しみ過ぎる。