F log
6 月 14 日土曜日。
渋谷オーチャードホールのマチネ公演で
K-Ballet 「ロミオとジュリエット」 を F 嫁と観に行きました。
もちろん贔屓のプリンシパルである 浅川紫織ちゃん がジュリエットを踊る日です。
じつはちょうど 3 年前の 2011 年 6 月。
同じようにオーチャードで紫織ちゃん初役のジュリエットを観たのでした。
その時のブログ記事、冒頭より引用します。
6 月 4 日土曜日、F 嫁と渋谷オーチャードホールに K-Ballet 「 ロミオとジュリエット 」 を観に行った。
ウチは何回か K-Ballet の舞台を観ているが、そのほとんどが非御大の日である。
F、F 嫁ともに 浅川紫織ちゃん のファンだというのがその理由だ。
この日も紫織ちゃんがジュリエットデビューするので、御大/マルケスという誰もが期待するソワレをあえて外し、
マチネの公演にやってきたわけだ。
前 log に登場した hirorin330 様のブログに憧れてマネていた 「◯◯だ。◯◯である」 調の文章が懐かしいですな。
2014 年のこの日もソワレは御大/マルケス、マチネで紫織ちゃんと遅沢さんが踊ります。
3 年が経過したにも関わらずまったく同じ状況なのが面白いです。
3 年 … 1,000 余日
プロフェッショナルなバレエ・カンパニーにおいて重責を担う 20 台後半のバレエ・ダンサーにとって 3 年というのは
我々の想像だにできない濃厚な日々だったことでしょう。
諸先輩の退団、自身の研鑽、他者へのコーチング、そして悪夢の負傷。
それら経験のすべてがたった 1 日だけ踊るジュリエットという役に凝縮され、客席の隅々までに届いたと確信しました。
紫織ちゃんの舞台はそれほど素晴らしいものでした。
拙筆でどれほど伝えられるのか甚だ疑問ですが、ファン故の暴走wも含め思いつくままに書いてみたいと思います。
RICOH GR
しばらく雨続きだった関東もこの日は晴天。
ただ湿度はそれなりにあってかなり蒸し暑かったです。
渋谷といえばいつもこの写真を撮っているような気がします。
この日は 109 の方へは行かず、F21 の下をくぐりいつも立ち寄る
立食いの寿司屋さん でランチを食べました。
生ほっけと太刀魚の炙り(塩)が絶品だったなぁ。
文化村前では
BMW をひやかし、中でお茶して正午の開場時間にオーチャードホールにたどり着きました。
RICOH GR
チケット争奪戦に出遅れた我々の席は 25 列目。双眼鏡が必須ですな。
1 階席後方は座席が千鳥配置に改修されてませんが、幸い前席のおふたりは背が低かったので助かりました。
もちろん座高が高い F は後席の方の邪魔にならないようお尻をずらして座ります。
以前は非御大の日は楽にチケットが取れたのですが、浅川/遅沢ペアの盤石ぶりにファンが増えている気がします。
この日もオーチャードはほとんど満席でした。
熊川版 「ロミオとジュリエット」 の特徴は言うまでもなく 2 幕構成であるということです。
マキューシオとティボルトの死の後で休憩が入る 3 幕が一般的ですよね。
演出としてはロザラインの存在を強調する以外、大筋で変わるところはありません。
ジュリエット
終演後、F と F 嫁から異口同音に出たのは 「たった 1 日ではもったいない」 という言葉。
浅川紫織ちゃん のジュリエットは本当に良かったんです。
まず第 1 幕 2 場での登場シーン。
乳母が部屋にいると舞台下手から元気よく登場します。
バレエダンサーの動きとしてはあまりない、両足でピョンと飛び上がる仕草がカワイイです。
25 列目から双眼鏡でずっと追っていましたが、これは 14 歳ですよw
3 年前にも初役として紫織ちゃんジュリエットを観ているのですが、誤解を恐れずに言えば若返っています。
もちろん実年齢は重ねているのですが、役柄へのアプローチとしてすごく若々しく見えるのですよ。
ジュリエットが乳母と戯れる際も、演技的な作為はなく本気で遊んでいるように見えました。
父親キャピュレット卿から結婚を告げられると途端に不機嫌になります。
お愛想笑いがまったくできないところも幼さをよく表していますね。
舞踏会でのロミオとの出会いは舞台対角を使ってゆっくりと見つめ合うシーンが印象的でした。
「ロミオとジュリエット」 を代表するバルコニーの PDD は近年稀に見るくらいの感動でした。
ジュリエットがバルコニーの階段を駆け下りるのとは逆に、幼さから大人への階段を駆け上っていくのがよくわかります。
遅沢ロミオとのパートナーシップももはや盤石といっていいでしょうね。
素晴らしいバルコニーの 5 場が終わると第 1 幕は終わりで休憩時間に入るのですが。
明かるくなるのがちょっと早過ぎです。
もう少しだけ…せめて 10 秒、20 秒でも暗いままバルコニーの余韻に浸らせてくれないかなと思うのです。
第 2 幕のジュリエットは怒涛のごとく駆け抜けます。
密かに結婚式を挙げたいと手紙を書くのも、パリスとの抗えない結婚話の反動でしょう。
教会でのジュリエットはすでに乳母に甘える少女ではなくなっていました。
一夜を過ごした部屋からロミオが去らなければならない第 2 幕 4 場。
直前の別れの PDD もとても良かったのですが、F が感銘を受けたのはロミオが去った後ジュリエットの号泣です。
ここは結構長い時間ベッド横の床で泣き続けるのですが、紫織ジュリエットの演技は単調にならず見応えがありました。
表現が難しいのですが、泣きながら感情の動きを表していたと言ったらいいのでしょうか。
バレエは踊る芸術ではありますが、こうした表現一つでどれほどの深みを加えられることか。
追い打ちを掛けるようにキャピュレット卿からパリストの結婚について迫られ、ジュリエットは追い詰められていきます。
僧ロレンスからロミオがもらった十字架のネックレスを効果的に使っていましたが…
全体的に大好きな熊川版ですが、ここだけは
ベッドに腰掛けて顔以外微動だにしないマクミラン版 が好きです。
熊川版では追い詰められて追い詰められて、教会の僧ロレンスに助けを求めに走ります。
マクミラン版でも結果は同じなのですが、ジュリエットの決意を描く時間を取ることにより彼女の主体性を表せるからなんです。
それをもって書かれた 2 通目の手紙は 「好きだから結婚しましょう」 という単純な 1 通目とは異なります。
愛を貫くために両親を含めたすべての人々を欺こうという大それた悪行なのです。
それでも仮とはいえ 「死」 を前にしたら怖くなって逡巡するのが当たり前です。
ジュリエットは薬の瓶を前にして大いに迷います。
意を決するにあたり、件の十字架ネックレスを床においた薬瓶を包むように置きます。
ここ、すごくいいなぁ。
墓室でのジュリエットは毎回の落涙ポイントであります。
とはいえ信頼できる表現者の踊り/演技でしか観ていないので、いつでも誰でもそうなのかは不明です。
紫織ちゃんのジュリエット集大成がこの暗い墓所にはありました。
いや結末も動きさえも分かっているのに涙がでるというのは、やはりパフォーマーが優れているからでしょう。
加えてプロコフィエフ先生の音楽が、中年オヤジの心にもグッとくるのですよ。
嬉しかったのは 3 年前に僭越ながら指摘した箇所…
ロミジュリ落涙ポイントである、ロミオの死を知ったときの絶叫。
前後の流れは素晴らしかったが、肝心の絶叫時に上 ( というか後ろに近い ) を向いてしまい、表情がわからなかったのが残念。
ここがキッチリと修正されていました。もちろん拙ブログは 1 mm も関係ないでしょうけれど。
きちんと前を見据えたまま叫び声 (いや聴こえんるんだって、ほんとに) を感じられたのが嬉しかったです。
熊川版で素晴らしいのはロミオが服毒する際はジュリエットの手を、ジュリエットが自刃する際はロミオの手を。
お互いがお互いの手を添えて死に向かうのです。
床に倒れたロミオに覆いかぶさるようにしてジュリエットは果てます。
死の直前、ジュリエットの左手がゆっくりと真上に伸ばされ、最後の生の輝きを放ちました。
心の底からブラボーです。
紫織ちゃんのジュリエット、本当に一日だけではもったいない。
それに彼女のロザラインも絶品なんですよ、じつは。
まぁ前ツアーの 「ラ・バヤデール」 では実質メインキャストで出ずっぱりでしたからね。
今回の 「ロミオとジュリエット」 に関しては百歩譲って我慢しましょう。
ただ浅川紫織というバレエダンサーが K-Ballet において放つ存在感は時間とともに大きくなっているのを感じます。
今後、どんな演目であっても彼女の舞台は必見であると申せましょう。 (チケット争奪戦は困るけどね)
再度言います。
自身が転機だと考えている 3 年前の初役時より、紫織ちゃんのジュリエットはより魅力的になっていたのでした。
RICOH GR
幕間にはお約束のスパークリング (F嫁) とペリエ (F)。
ロミオ
遅沢佑介さん といえばティボルトが当たり役ですが、ロミオもイケてます。
登場した時こそマキューシオ、ベンヴォーリオに対して少し年上感があったのですがすぐに気にならなくなりました。
インタビューではロミオよりティボルトの方が役として難しいと仰っていました。
貴と暴をうまくバランスしなければならないと。なるほどね。
ロミオとして印象的だったのはバルコニーのパ・ド・ドゥでした。
若さに任せて突っ走るロミオの荒々しさと、恋する男の初さが同居していましたね。
ジュッテも大きくアントルラッセの高さには目を引かれました。
3 年前は抑え気味との印象もありましたが、今回は一変しました。
紫織ジュリエットとのパートナーシップもまったく不安がありませんね。
K-Ballet を見渡してもこれほど安心して見ていられるペアはないのでは?
プログラムでの発言にあるように、若いからといってロミオを等身大で踊るだけではダメ。
経験を重ねた上で若さを客観的に見られるようになって初めて表現の幅が広がると。
まったくその通りだと思います。
マキューシォ、ベンヴォーリオ、ティボルト
マキューシオ:石橋奨也さん、ベンヴォーリオ:栗山廉さん、というアーチストである若手からの抜擢です。
さすがに難役のティボルトは ニコライ・ヴィユウジャーニンさん でしたが。
両若手は一生懸命務めておりましたが、やはり少々存在感が足りなかったでしょうか。
まぁプリンシパルである遅沢さんと絡むのですから、経験不足はやむを得ませんね。
でもこうした男性ダンサーを育てる役が 「ロミオとジュリエット」 にはありますね。
石橋さん、栗山さんの今後のさらなる飛躍を楽しみにしています。
ロザライン
前述の通り K-Ballet におけるロザラインは特徴的です。
ロミオに対し恋愛ごっこ的な戯れを仕掛け翻弄したかと思えば、モンタギュー家との争いでは先頭に立ちます。
要するにキャラとして一本立ちしているわけで、女性の見せ場が少ない 「ロミオとジュリエット」 の中では重要な役です。
年齢はロミオより上で何よりも美人。
F & F 嫁的ロザラインの基準は残念ながら退団されてしまった松岡梨絵さんなんです。
彼女のロザラインは絶品でした。
今回ロザラインを演じたのはこれもファースト・アーチストからの抜擢で 山田 蘭さん でした。
K の出待ちで感じることがよくあるのですが、彼女も熱心なファンがついてますね。
おそらく初役であろう、山田さんは首が長くラインの美しいダンサーです。
端正ではありましたが熱量がもう少し、表情の振れ幅が欲しいと感じました。
出演回数からいっても今回の 「ロミオとジュリエット」 ではロザラインのメインキャストですね。
本人も期するものがあると思いますので、当たり役と呼ばれるように頑張ってほしいと思います。
RICOH GR
休憩時、泡をひっかけゴキゲンの F 嫁です。
これは「照明を明るくするのが早すぎる!」 と訴えているところですw
キャピュレット夫妻
何度も書いていますがキャピュレット卿の キャシディさん は流石の安定感です。
このような重鎮が舞台を引き締めてくれるのはありがたいですね。
前回観たキャピュレット夫人役の松根花子さんは残念ながら退団されてしいました。
彼女には期待していたのですが残念でした。
今回キャピュレット夫人を演じたのは、これもアーチストからの抜擢である 酒井麻子さん でした。
彼女がモンテギュー夫人と並んで登場した時、F 嫁の双眼鏡にググッと力が入るのがわかりました。
ええ、F 嫁好みの美人です。
F 嫁は白鳥や眠りで登場する脇役である王妃にこだわりがあるようです。
もちろん美女好きの F 嫁ですから、酒井さんは文句なしでしょう。
K のキャピュレット夫人像はとにかく夫に従順です。
娘の必至の訴えにも夫の顔色を伺い、真摯にぶつかり合うことはありません。
それでもジュリエットの仮死後、墓所での別れの際は母親としての慟哭を感じさせました。
以前の K-Ballet は王妃のような立役に近い役柄には、非バレエダンサーを起用する場合もありましたが、
若手に積極的に舞台を踏ませる姿勢は大賛成です。
乳母役の 西成雅衣さん もそうですが、思わぬ才能を発掘する可能性もありますからね。
ただ若手だからということもありますが、西成さんのメイクや装いに関しては乳母にしては少し若すぎる気もします。
松根さんにはプラスアルファの才を感じていたので繰り返しになりますがとても残念です。
僧ロレンス
そうした意味で無尽蔵の可能性を感じつつあるのが、僧ロレンスを演じた 杉野 慧さん です。
ユースの舞台でロットバルトを怪演し好評だった杉野さん。
まだお若いのですが、僧ロレンス役がピッタリでした。
この方、いい意味で引っかかるところがあり、懐が深いというか引き出し多そうですね。
おそらく主役級も踊れる実力はあると思いますが、こうしたキャラクテールもこなせるのはアドバンテージです。
将来どのようなダンサーへ成長していくのか分かりませんが、F は杉野さんに今後も注目していきます。
パリス
これも大抜擢、アーチストの 川村海生命さん でした。
我々のパリス・スタンダードはファンに怒られるかもしれませんが宮尾俊太郎さんなんです。
パリスは文武両道に秀でた美青年ということであれば、ロミオに勝る宮尾さんのプロポーションは有益ですね。
身長はどうしようもありませんが、川村さんのパリスは終始控えめでした。
ジュリエットに拒絶されてもどうして…という疑問が先に立ち、怒りまでは感じさせません。
もっとも裕福な貴族の子弟ということであるなら、ノーブルな立ち振舞は当たり前かもしれませんが。
自身の死の直前、ジュリエットに突進するロミオを阻止しようと両手を広げたパリスに一瞬漢を見ました。
RICOH GR
プロダクション
ヴェローナのセットは見慣れているからか 「ラ・バヤデール」 のような違和感はありませんでした。
限られた背景を上手く切り替えて、場面転換に流用するテクニックは見事です。
道行きを多用したスピーディーな演出には毎回感服されられます。
特に K のロミジュリで好きなのが教会のシーンです。
結婚式と仮死薬の受け渡しで 2 回登場する教会は、このプロダクションを代表する演出だと勝手に思っています。
舞台中程に降りた緞帳 (その背後では次の転換中) に十字架を釣り、そこを頂点に左右から三角形の照明を当てます。
こればかりは言葉で説明するのは難しいのですが、照明だけで構築物を一切使わず教会を見事に表しています。
毎回この演出を見る度に感嘆してしまうのです。
唯一、ジュリエットの部屋だけは空間過多と思いました。
左右の階段を中央に集め、高い天蓋ベッドが一台鎮座しているのですがさすがに広すぎです。
これも緞帳を使った演出が可能か考えてみしましたが、一夜を過ごした後に朝日が差し込んでくる効果が必要と気づき
やはりちょっと難しいかもと思い至りました。
最後の墓所で高い位置に十字架が飾られていましたが、教会の流用か記憶を確認することができませんでした。
次回、ロミジュリの再々々演があれば、今度はよく見たいと思いました。
長々と順不同で書き連ねました。
思いつくままなのでまとまりのない文章と思いますが、当日の舞台の素晴らしさがほんの少しでもわかっていただけたら幸いです。
好きなダンサーが主役を踊る舞台を好きな演出で観る贅沢。
今回のツアーで F & F 嫁が観るのは 1 回限りですが、オーチャードが月末に 2 日間、地方公演がその前後に計 6 日。
チケットをお持ちの方はもちろん、もし当日券があるならぜひともご覧ください。
RICOH GR
マチネ終演後、ホール出口にいるとバレエ関係で知り合った方々がお声を掛けてくれました。
まずは昨年 11 月の
K-Ballet 「白鳥の湖」 出待ちでご一緒だった N さん。
浅川紫織ファンの同志である N さんはブログにコメントいただいて以来、同じ舞台を観ることが続きました。
今回も唯一の紫織デーであるのでいらっしゃると思っていたのでお会いできて嬉しかったです。
美女には目がない F 嫁も 「今日は N さんいらしてるかしら」 と探してました。
短い時間でしたが舞台の感想などやり取りを少々。
ブログに掲載されるのを楽しみにしています、と仰っていただきましたがこんなとっ散らかった駄文ですみません。
というかそれ以上に最近バレエ以外の変な話題が多くてすみませんw
続いて F & F 嫁を K-Ballet の世界に引き込んだ張本人、yol さん 登場です。
母上様とご一緒でしたが、おふたりともお美しい!
yol さんとのリアル出会いは 2007 年、もう 7 年にもなるんですね。
最近ではお仕事がお忙しい様子の yol さん。それでもこの後ご友人の Y さんとソワレ連チャンとは流石。
また渋谷の居酒屋でもご一緒しましょうね。
最後は唯一の主演日ということでいらしていると予想していた 紫織ちゃんの母上様 とお会いできました。
血縁でもなんでもないただの一ファンに対していつも優しく接してくださり感謝しています。
今までもそうでしたがこれからもずっと紫織ちゃんのファンであり続けることを誓わせていただきます。
さて F & F 嫁/ K-Ballet といえば恒例の出待ちです。
このマチネの後は御大/マルケスのソワレがあります。
出てこない可能性もありましたが、主役であるのでタクシーの有無で判断しようととりあえず楽屋口に並びました。
その時点で先陣は 5〜6 名でした。
1 時間が過ぎ、2 時間になろうかという頃、2 人があきらめて帰りました。
タクシーも横付けされないし、これはどうやらソワレを見るのかもしれないと思い始めました。
残りは我々の他 3 名です。
ソワレの開演時間になった頃、残った方に挨拶してその場を後にしました。
残念ながら 今回の出待ちは空振り でした。